マイクロ法人を作ると「節税になる」と言われる。でも、実際いくら得になるのか、数字を見ないまま動くのはリスクがある。本記事では、ありがちなモデルケースをもとに、社会保険料と所得税がどう変わるかをシミュレーションしてみる。
前提:マイクロ法人節税の仕組み
マイクロ法人節税の核心は「社会保険料の計算基準を下げること」だ。具体的には、こうなる。
- 個人事業の売上は国民健康保険料の計算対象になる(所得が上がるほど保険料も青天井)
- マイクロ法人を設立し、役員報酬を最低ラインに設定すると、厚生年金・健康保険の計算基準が役員報酬のみになる
- 個人事業の稼ぎは「事業所得」として別扱いになり、社会保険料の計算に含まれない
この「二刀流」が機能する条件は、個人事業と法人事業が明確に分離できることだ。
モデルケース:年収600万円のフリーランス
以下の条件でシミュレーションする。
- 個人事業主(フリーランス)、年収600万円(所得500万円とする)
- 単身、東京都在住、40歳未満
- マイクロ法人(合同会社)を設立し、役員報酬を年84万円に設定
国民健康保険料の比較(東京都・2024年度)
| 項目 | 法人化前(個人事業のみ) | 法人化後(二刀流) |
|---|---|---|
| 健康保険料計算基準 | 所得500万円 | 役員報酬84万円のみ |
| 国保 or 協会けんぽ | 国民健康保険 | 協会けんぽ(厚生年金) |
| 年間保険料(目安) | 約66万円 | 約18万円(労使折半後の自己負担) |
| 差額 | — | ▲約48万円 |
これはあくまで試算であり、自治体・収入・扶養状況によって変わる。ただし、年収500〜800万円帯のフリーランスでは、年30〜60万円規模の削減効果が見込まれるケースが多い。
法人維持コストを差し引くと
節税効果だけ見てもダメで、コストを引いた「純利益」で判断する必要がある。
- 法人住民税均等割:年約7万円(赤字でも必須)
- 税理士費用:法人決算を自分でやれば0円、頼むと年20〜40万円
- 登記費用:合同会社で約6万円(初年度のみ)
シミュレーションの例では、節税▲48万円 に対して維持コストが年7〜10万円程度なら、差し引き年38〜41万円のプラスになる計算だ。税理士に頼む場合はその分縮む。
所得税への影響は?
社会保険料の削減に加えて、所得税にも影響が出る場合がある。
- 役員報酬には「給与所得控除」が適用される(個人事業の青色申告控除とは別枠)
- 役員報酬が年84万円の場合、給与所得控除は約55万円 → 課税される給与所得は約29万円
- 所得税・住民税の計算が、個人事業所得と合算される点は変わらないが、法人側の経費計上で課税所得を圧縮できる
ただし、役員報酬を高く設定するほど社会保険料削減効果が薄れるため、「役員報酬は最低ライン、個人事業所得で稼ぐ」という設計が基本になる。
効果が出やすい人・出にくい人
効果が出やすい:
- フリーランス・個人事業主で年収400万円以上
- 国民健康保険の保険料が重いと感じている人
- 個人事業と法人事業を明確に分けられる業種(例:コンサル、IT、クリエイター)
効果が出にくい・慎重になるべき:
- 副業がまだ不安定、または年収300万円以下
- 会社員で社会保険が会社加入のまま(二刀流の意味が薄れる)
- 事業の種類が個人と法人で分離しにくいケース(税務リスクになる)
まず「自分の数字」で試算するのが先決
シミュレーションはあくまでモデルケースだ。自分の所得・住んでいる自治体・家族構成によって結果は大きく変わる。国民健康保険料は各自治体のウェブサイトで試算できるため、まず現状の保険料を確認することから始めよう。

自分で勉強しながら進めたい人には、以下が参考になる。





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