マイクロ法人を設立したとき、多くの人が最初に悩むのが「何を経費にできるか」という問題だ。個人事業主とは違い、法人の経費には明確な判断基準がある。税務署に否認されないためには、その線引きを正確に理解しておく必要がある。
法人経費の基本原則:「事業目的」があるかどうか
法人が経費として計上できるのは、「事業に直接または間接的に関連する支出」に限られる。税法上の根拠は法人税法第22条第3項で、「当該事業年度の収益に対応する売上原価、費用及び損失の額」が損金算入できると定められている。
シンプルに言えば、「事業のために使ったと説明できるか」が判断軸だ。説明できないものは経費にならないし、説明できても証拠(領収書・契約書・議事録など)がなければ否認される。

マイクロ法人で経費にできる主なもの
役員報酬
自分への報酬を法人の費用として計上できる。ただし定期同額給与(毎月同額)が原則で、期中に変更すると損金不算入になる部分が出る。金額設定の考え方は別途まとめている。
社会保険料(法人負担分)
役員報酬に連動して発生する健康保険・厚生年金の法人負担分は全額損金。個人事業主では全額自己負担だったものを、法人と個人で折半できる点がマイクロ法人の主要メリットのひとつだ。
通信費・インターネット費用
仕事で使うスマホや自宅のインターネット回線は、事業利用分を按分して経費計上できる。「仕事:プライベート=7:3」など合理的な根拠があれば認められやすい。全額計上は否認リスクが高い。
自宅の家賃(地代家賃)
自宅を法人の事務所として使う場合、賃貸借契約を法人と個人(自分)の間で結び、家賃の一部を法人経費にする方法がある。社宅として処理するケースもある。いずれも「業務で使用している実態」が必要で、書面で明確にしておくことが重要。
パソコン・周辺機器・ソフトウェア
業務に使用するPCやアプリのサブスクリプションは経費になる。10万円未満なら一括損金算入可。10万円以上は減価償却(通常4〜5年)が必要になる。
書籍・セミナー費用
事業に関連する書籍や勉強会の費用は経費にできる。
のような実務書は、法人名義で購入すればそのまま損金扱いになる。旅費・交通費
取引先との打ち合わせや出張にかかる交通費・宿泊費は経費計上できる。電車代・タクシー代の場合は日付・目的・行き先のメモを残しておくことが重要。
接待交際費
取引先との飲食費は接待交際費として経費にできるが、中小法人の場合は年間800万円が上限(法人税法第61条の4)。領収書に「誰と・どんな目的で」を記載しておくこと。プライベートな飲食は対象外。
経費にできないもの・グレーゾーン
❌ 完全プライベートの支出
家族の旅行費、個人的な趣味の費用、プライベートな飲食代は経費にならない。「社員旅行」「接待」として処理しようとしても実態が伴わなければ否認される。
❌ 証憑のない支出
領収書やレシートがない支出は、事実があっても税務調査で否認されやすい。少額でも必ず記録を残す習慣をつけておくこと。
⚠️ 生命保険・養老保険(要注意)
法人で加入する生命保険は、一定の条件下で損金算入できるが、2019年の税制改正で取り扱いが厳格化された。加入前に税理士に確認することを強くすすめる。
⚠️ 自宅全額を法人経費にする
自宅家賃を全額法人経費にしようとするケースは否認リスクが高い。業務利用割合の根拠(部屋の図面・利用時間の記録など)が必要で、実態のない按分は認められない。
⚠️ 過大な役員報酬
役員報酬は「不相当に高額な部分」は損金不算入になる(法人税法第34条)。社員数1人のマイクロ法人で業界水準を大幅に超える報酬を設定すると、税務調査で問題になる可能性がある。
税務調査で否認されないための実務ポイント
- 領収書は必ず保存(電子保存可・7年間保管義務)
- 按分根拠をドキュメント化(スマホ・家賃など)
- 議事録を残す(役員報酬決定・資産購入など重要事項)
- プライベートと法人口座を完全分離(混在は即アウト)
- 月次で帳簿を締める(後からまとめて記帳は漏れの原因)
経費の線引きに迷ったら、「事業目的を第三者に説明できるか」を判断基準にすると整理しやすい。グレーゾーンは税理士に相談するのが最も確実だ。
参考:実務で役立つ書籍
法人の節税・経費処理を体系的に学ぶなら、実務家が書いた書籍を1冊手元に置いておくと判断の拠り所になる。



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