ふるさと納税、なんか気持ち悪くないですか。

「損してる」とわかってはいる。でも、どうしても素直にやる気になれない。そういう人は、けっこういると思う。特に氷河期世代の自分たちには。
この記事は、そのムカつきを否定しない。むしろ、なぜムカつくのかをちゃんと分解したうえで、それでもやったほうがいい理由を整理する。
なぜ「気持ち悪い」のか、正直に分解する
まず、そのムカつきの正体を確認する。大きく3層ある。
1. 制度設計への違和感
ふるさと納税は、もともと「地方への税収格差を是正する」という目的で2008年に始まった制度だ。趣旨は理解できる。でも現実に何が起きたかというと、返礼品競争だった。
自治体同士が「うちの返礼品のほうが豪華」と競い合い、アマゾンのギフト券を返礼品にする自治体まで出た。国がそれを規制し、返礼品の調達コストを寄付額の3割以内に制限した。つまり、制度の趣旨から逸脱した競争が起き、国が後追いで修正するという、あまりきれいではない経緯がある。
さらに言えば、この制度は所得が高い人ほど恩恵が大きい。年収200万円の人と年収800万円の人では、控除の上限額がまったく違う。「節税できる」と聞こえはいいが、恩恵を受けやすいのは余裕のある人からだ。逆進性への違和感は、制度の構造から来ている。
2. 氷河期世代に染みついた反射
氷河期世代に特有の感情層がある。「こういう制度をうまく活用する人間」への反射的な嫌悪感だ。
就職できなかった。正社員になれなかった。あるいはなれたとしても、バブル崩壊後の萎縮した企業文化の中で働いてきた。その経験の中で育つのが、「得をしている人間」への複雑な感情だ。
「ふるさと納税で牛肉もらった」という話を聞くと、どこか「あ、そういうことをする人ね」という距離感が出る。自分がやるのも、なんとなく恥ずかしい。「乞食みたいじゃないか」という自尊心が邪魔をする。
これは感情として正直だと思う。そしてその感情は、20年以上かけて形成されてきた。簡単には消えない。
3. 「制度ハックに乗るのか」という抵抗感
もう少し言語化すると、こういう感覚でもある。「国が歪んだ制度を作って、それに乗っかることで得をする。俺はそのゲームに参加したくない」
これは倫理的な抵抗感だ。制度が気に入らないから、使いたくない。その気持ちは、別にわがままじゃない。
受益者を見ると、少し変わる
ムカつく気持ちを肯定したうえで、別の角度を提示したい。
ふるさと納税の返礼品を実際に作っているのは誰か。宮崎の牛農家、北海道の漁師、地方の加工業者、工芸品を作る職人。都市部の大企業ではなく、地方で細々と生産を続けている事業者たちだ。
ふるさと納税の仕組みができてから、これらの事業者に注文が入るようになった。販路がない地方の食材が、ふるさと納税というルートで都市部に届くようになった。制度の設計が歪んでいたとしても、その末端で恩恵を受けている人たちは確かにいる。
あなたのふるさと納税が、東京の自治体の財源を減らして、過疎が進む自治体の小学校の維持費になっているケースもある。寄付先の使い道を選べる自治体もあって、「子どもの医療費補助」「農業振興」「自然環境保全」など、あなたが関心を持てる用途に絞って寄付することができる。
これを読んで「まあそれならいいか」と思えるかどうかは、人による。でも少なくとも、「誰かが得するゲーム」ではなく「一部の受益者は地方の生産者だ」という事実は知っておいていい。
「納得してやる」より「損するほうが馬鹿らしい」で動く
正直に言う。ふるさと納税の制度設計を完全に納得した上でやる必要はない。
制度が気に入らなくても、制度は存在する。あなたが使わなくても制度はなくならないし、誰かが使う。その「誰か」が節税して、あなたが節税しない。その差は毎年積み上がる。
年収500万円の独身で、上限いっぱいやると約6万円分の返礼品が実質2,000円で手に入る。これを10年繰り返すと、同じ年収・同じ労働をした人間の間に60万円近い差が生まれる。
氷河期世代は、すでに制度の恩恵を受けにくい立場で生きてきた。その上さらに「気に入らないから使わない」で損をし続けるのは、あまりにもったいない。
制度に怒りながらでも、使うことはできる。怒りと利用は矛盾しない。
氷河期世代が最初にやること、具体的に3ステップ
感情の整理ができたら、動く。手順は単純だ。
ステップ1:上限額を確認する(10分)
源泉徴収票を出して、ふるさとチョイスのシミュレーターに年収と家族構成を入力する。これで「今年いくらまで寄付できるか」がわかる。
ステップ2:使い道を選ぶ(15分)
返礼品より先に「どの自治体に届けたいか」で選んでもいい。使い道を指定できる自治体を選んで、自分が関心を持てる用途に寄付する。それでも返礼品はついてくる。
ステップ3:ワンストップ特例で申請する(15分)
会社員で寄付先が5自治体以内なら、確定申告は不要だ。各自治体から届く申請書に記入して返送するだけでいい。マイナンバーカードがあればオンライン申請もできる。
翌年の住民税決定通知書を見ると、控除が反映されているのがわかる。初めてそれを見たとき、制度への感情がどう変わるかは、あなた次第だ。
まとめ:ムカつきを持ったままでいい
ふるさと納税の制度設計に問題があることは、認める。逆進的で、趣旨からズレた競争を招いた側面もある。氷河期世代がそれに反感を持つのは、感情として正直だ。
ただ、その感情と「使うかどうか」は別の話だ。制度に怒りながら使う人間は、怒りと損をセットにしている人間より賢い。
ムカつきはそのまま持っていい。でも今年の分だけ、試してみてほしい。
制度の話をもう少し体系的に整理したいなら、この本が参考になった。
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