【音楽理論#7】リズム理論入門|グルーヴと16分音符の仕組み

音楽・機材

グルーヴって、いったい何なのか。

Ableton Live Suiteのピアノロールを開いて、打ち込みで8ビートを作り始めた頃、最初に感じた壁がこれだった。MIDIで正確に入力した4つ打ちドラムは、確かに「ドラムの音がする」。だが何かが足りない。聴いていて身体が動かない。テンポも正しい。音も正しい。なのに「ノれない」。

この「ノれない問題」の正体を調べ始めたら、グルーヴとリズム理論の本質に突き当たった。


リズムの最小単位は何か

4分音符・8分音符・16分音符、という分け方は知っていた。だが「なぜ16分音符が重要なのか」を、正直ちゃんと考えたことがなかった。

1小節を4拍に分けたのが4分音符。その4分音符をさらに2分割したのが8分音符(1小節に8個)。さらに2分割したのが16分音符(1小節に16個)。

現代ポップス・ダンスミュージック・ダブ・テクノのほぼすべてが「16分音符グリッド」を基準に動いている。DAWのデフォルトグリッドが16分音符なのは偶然ではない。16個の「箱」のどこに音を置くか、どこを空けるか、その設計がリズムパターンの全体像を決める。

32分音符は出てくるか

出てくる。特にドラムのフィルやハイハットの細かいパッセージで使われる。ただし、グルーヴの骨格を作るのは16分音符グリッドで十分と考えていい。32分音符は「装飾」の領域だと私は理解した。


「表拍」と「裏拍」の話

4拍子なら1拍・2拍・3拍・4拍。このうち1拍と3拍を「表拍(downbeat)」、2拍と4拍を「裏拍(backbeat)」と呼ぶ。

ロック・ポップスのスネアは、ほぼ確実に2拍と4拍(裏拍)に入る。これがバックビートだ。行進曲や子ども向けの音楽は表拍に強いアクセントが来るが、グルーヴ系の音楽はほぼ全部バックビートが基本になる。

「裏拍に手をたたく」練習をするとリズム感が鍛えられる、という話を聞いたことがある人も多いと思う。あれはこの構造を体感させるための練習だ。


16分音符グリッドとグルーヴの関係

1小節16個の箱を使って、基本的な8ビートパターンを書き出してみる。

位置:   1  e  +  a  2  e  +  a  3  e  +  a  4  e  +  a
バスドラ: ●  .  .  .  .  .  .  .  ●  .  .  .  .  .  .  .
スネア:  .  .  .  .  ●  .  .  .  .  .  .  .  ●  .  .  .
ハイハット: ●  .  ●  .  ●  .  ●  .  ●  .  ●  .  ●  .  ●  .

「1 e + a」という数え方は、16分音符グリッドを声に出して数える方法だ。1拍目の4箱を「ワン・エ・アン・ア」と数える。このグリッドのどこにキックが来て、どこにスネアが来て、ハイハットが何拍おきに入るかで、リズムパターンが決まる。

上の例は「8ビート(エイトビート)」と呼ばれる最もベーシックなパターン。ハイハットが8分音符(1拍に2個)で刻まれている。これを打ち込みで完璧に再現したとき、なぜか機械的に聴こえる問題が生じる。


なぜ「完璧に揃った」打ち込みはグルーヴしないのか

ここが本質だと思っている。

生のドラマーが演奏するとき、すべての音符が完璧にグリッド上に乗ることはない。数ミリ秒単位の「ズレ」が常にある。このズレは「ミス」ではない。むしろグルーヴを生み出す正体だ。

DAWでこれを再現する方法が「ヒューマナイズ(Humanize)」と「クォンタイズ強度の調整」だ。Ableton Liveにはグルーヴテンプレートを適用する機能があり、特定のドラムサンプルや演奏スタイルの「ズレパターン」を丸ごと他のトラックに適用できる。

ただ「ランダムにズレを加えれば良い」という話ではない。グルーヴのズレには方向性がある。

ビハインド・ザ・ビートとアヘッド・オブ・ザ・ビート

テンポの基準点から「少し遅れて」音を置くことをビハインド・ザ・ビートと言う。R&B、ソウル、ヒップホップのドラムに多い。「重さ」「どっしり感」「ダレた気持ちよさ」が出る。

逆に「少し早め」に置くことをアヘッド・オブ・ザ・ビートと言う。パンクやスラッシュメタルのドラマーに多く、前のめりな疾走感が生まれる。

完璧なグリッドの打ち込みは、どちらでもない。前でも後ろでもなく「正確」だから、無表情に聴こえる。これが冒頭の「ノれない問題」の正体だった。


スウィングとシャッフルの正体

ジャズ、ブルース、ダブのハイハットで「タッカタッカ」という跳ねた感じを聴いたことがあるはずだ。あれがスウィング(またはシャッフル)と呼ばれるリズムだ。

16分音符グリッドで言うと、「1・e・+・a」の4箱のうち、「e(2番目)」の位置を後ろにずらすことで跳ねた感じが生まれる。完全に3連符の割合にずらしたのが「ジャズのスウィング」、少しずらした状態が「ライトスウィング」や「ファンクのグルーヴ」になる。

Ableton Liveのグルーヴ設定で「Swing」の値を変えると、この跳ね具合をコントロールできる。0%だと完全にストレート(グリッド通り)、100%に近づくほど強くスウィングする。ジャズ風の曲で試したとき、50〜60%あたりに設定した音が急に「それっぽく」なった。


ポリリズムとは何か

少し応用の話をする。

ポリリズムとは「複数の異なるリズムパターンが同時に鳴っている状態」だ。たとえば4拍子の上に3拍子のパターンが乗っている、という状態がポリリズムの典型例。

アフリカの伝統音楽に多く見られ、ブラジルのサンバ、ジャズのコンピングにも含まれている。テクノやダブでも意図的に使われる。「何となく複雑に聴こえるのに心地よい」と感じる音楽の多くには、このポリリズムの要素が入っている場合が多い。

Ableton Liveで試す簡単な方法は、ハイハットのパターンを「3刻み」(3個おきにアクセント)、バスドラを「4刻み」で設定することだ。2つのパターンが12拍後に初めて同期するため、その間ずっとリズムが「動いている」ように聴こえる。


「16分音符グリッドが分かれば、あとはズレの設計だ」

この記事を書いて自分の中で整理できたのは、グルーヴの問題は「どこに音を置くか」より「どこをどれだけズらすか」の問題だ、ということだ。

テンポ、拍子、音符の長さ、これらは「骨格」に過ぎない。骨格だけでは人形が動いているように聴こえる。グルーヴを生み出すのは、その骨格に乗せた「意図的なズレ」と「非対称性」だ。

Ableton Liveのグルーヴテンプレートを色々と試して初めて、「あのドラムの感じ」と「このドラムの感じ」の違いが何から来るのかが少し分かった気がした。

次回(第8回)はこのリズム理論の応用として、レゲエとダブのオフビートが「なぜあんなに気持ちいいのか」を掘り下げる予定だ。


参考書籍

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