Focusrite Scarlett Solo vs Steinberg UR22C|プリアンプ設計から選ぶDTM入門

Focusrite Scarlett Solo 4th gen vs Steinberg UR22C|プリアンプ設計から考えるDTM初心者の選び方 音楽・機材

Scarlett Solo の旧世代(3rd gen)と 2i2 を比べた記事(Scarlett Solo と 2i2 の違いを比較)を書いたあと、「4th genが出たのに、なんで仕様表が変わっているのかよくわからない」という話を知人に聞かれた。自分でもそのとき「UR22C との比較どうなんだっけ」と思ったことを思い出して、改めて調べてみた。

結果として、スペックシートを並べるだけでは見えてこない設計思想の差がくっきり出た。DTM初心者が「Solo 4th genかUR22Cか」で迷うのは当然だと思う。でも迷う前に知っておくべき構造的な話がある。

前提:2機種はどこが共通でどこが違うか

どちらも「2イン・2アウト、USB接続、マイクプリ1〜2本」という基本仕様は同じだ。価格帯もほぼ同じ(2万〜2万5千円前後)。スペック表だけ見ると差がわかりにくい。

主要スペックを並べるとこうなる。

  • Focusrite Scarlett Solo 4th gen:最大24bit/192kHz、ダイナミックレンジ 111dB(ADC)、マイクプリ 1本(Linコンボ)、Hi-Z入力あり(フロントの1系統がGtr/マイク兼用)
  • Steinberg UR22C:最大32bit/192kHz、ダイナミックレンジ 108dB(ADC)、マイクプリ 2本(D-PRE搭載)、Hi-Z入力あり(2系統どちらも対応)

スペック上は「UR22Cのほうが32bit対応でマイクプリが2本」に見える。でもこの読み方は雑だと思う。

「32bit」に惑わされない:録音では24bitで十分という話

UR22Cは「32bit/192kHz対応」をウリにしているが、実際の録音で32bitのダイナミックレンジ(約192dB)が意味を持つ場面はほぼない。録音環境のノイズフロア(背景雑音)が100dB以上あることはまずないからだ。

マスタリング段階でのサンプル精度という文脈では意味があるが、家庭での録音・DTM用途では24bit/96kHzで十分すぎる。「32bit対応」はカタログ数字として効くが、実際の聴感差はほぼ発生しない、というのが業界的な合意だと思う(推測ではなく、Focusriteを含む複数メーカーのホワイトペーパーで言及されている)。

むしろ差が出るのはプリアンプ回路の設計だ。

プリアンプ設計の違い:4th genで何が変わったのか

Scarlett Solo 4th genの最大の変更点は、プリアンプ回路の再設計だ。3rd genまでのSolは「クリーンで使いやすいが特徴がない」というレビューが多かった。4th genではFocusriteが「新しいマイクプリ設計」と明言しており、ダイナミックレンジが110dB超に改善されている。

一方のUR22Cは「D-PRE」という独自プリアンプを搭載している。これはYamahaが業務用機材向けに設計した回路をコンシューマー向けに展開したもので、「トランジスタを使ったディスクリート設計」が特徴とされている。スタジオ機材の下流に置いたような設計思想、ということだ。

実際の音の違いについては、測定値ではなく主観的な評価になってしまうので「事実」として断言はできないが、複数のレビューを読んだ印象としては「ScarletはEQがしやすいフラットな入力、D-PREは中低域に密度感がある」という傾向が多く見られる。あくまで推測のレベルだ。

ドライバーと動作安定性:UR22Cのアドバンテージ

見落とされがちな差として、ドライバーの安定性がある。

SteingbergはYamahaのグループ企業であり、Cubase・Nuendoの開発元でもある。UR22CのドライバーはWindowsでもMacでも比較的安定していると言われていて、特にUSB3.0(Type-C)対応により低レイテンシー動作がしやすい。

Focusriteのドライバーも安定はしているが、過去バージョンではWindowsでのブルースクリーン報告があった(現行4th gen世代では改善されているとされる)。Macを使っていて、Logicと組み合わせる環境ならFocusriteのほうが相性がいいという話も聞く。

ただ、自分はMac + Logic Pro環境なので、UR22Cのドライバーを直接試した経験はない。この差については実体験ではなくリサーチベースの情報として読んでほしい。

マイクプリ2本 vs 1本:実際に差が出る場面

UR22Cにはマイクプリが2本ある。つまり「マイク2本同時録音」か「マイク1本+ライン入力」ができる。Scarlett Soloはマイク1本+Hi-Z(ギター/ベース)の1本だ。

DTMで1本のVocalとアコギを同時録音したい、あるいはポッドキャストで2人が話す場面では、UR22Cの2プリ構成が活きる。一方で「宅録ボーカル+ソフトシンセ」という組み合わせがメインであればScarlett Solo 1本で十分だ。

用途が「ギター演奏+歌の同時録音」「2マイク使用」なら迷わずUR22Cだと思う。

付属ソフトウェアの差

Scarlett Solo 4th genには「Hitmaker Expansion」というプラグインバンドルが付属する。ProToolsやAbleton Liveのトライアル版に加え、プロが使うモデリングプラグイン(Antares Auto-Tune Starter, Softube Marshallなど)が含まれる。DTMを始めたばかりで音源やエフェクトがほしい人には即戦力になる。

UR22CはCubase AIが付属する。Cubase系のDAWに移行する予定がある人には相性がいいが、Logic ProやAbleton Liveをすでに使っている人にとっては不要だ。

自分はすでにLogic Proで環境が完結しているので、バンドルの価値を感じにくい。「これからDAWを選ぶ人」と「すでにDAWが決まっている人」で付属ソフトの価値は大きく変わる。

判断軸を絞る:どちらを選ぶか

ここまで整理すると、判断軸は以下の2点に絞れる。

① 同時に録音したい音源が2本以上あるか
マイク2本、もしくはマイク+ラインを同時に録りたいならUR22C一択。Scarlett Soloでは物理的にできない。

② Mac + Logic Pro環境でボーカル・ギター1本録音がメインか
この条件なら Scarlett Solo 4th gen がシンプルでいい。ドライバーのMac相性、プリアンプの再設計、Hitmakerバンドルの充実度、この3点が4th genで底上げされている。

「どちらでも用途が同じ」という人は、32bitスペックより「今の環境に合ったドライバー安定性」を重視したほうがいい。スペックシートで比較するなら32bitのUR22Cが勝ちに見えるが、Mac+Logic環境での使い勝手を考えると、Scarlett Solo 4th genのほうが選択肢としてシンプルだ、というのが調べた末の自分の考えだ。

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