
中古で6,000円のKORG Volca keysを買ったのは、ちょうど半年前のことだ。「シンセってどんなものか試してみたい」という軽い気持ちで、ハードオフで手に取った。それが気づけば、毎晩いじり続けるようになっていた。
遊びが実験になり、実験が習慣になった。半年経った今、俺はVolcaを通じて「次に何を買うべきか」がはっきりわかった。この記事では、その答えを正直に書く。買って正解だったものと、その理由を具体的に。
半年で気づいた「Volcaの限界」
Volcaは素晴らしい入門機だ。だが半年使い込むと、明確な壁にぶつかる。
まずポリフォニーの制限。Volca keysは3音同時発音まで。コードを弾いていても何か物足りない。厚みのあるサウンドを作りたくなると、3音では窮屈すぎる。
次に音色の幅の狭さ。アナログシンセとして基本的な音は十分出るが、FMシンセやウェーブテーブル系の音は全く出ない。「あの独特のベルみたいな音が出したい」と思っても、Volcaだけではどうにもならない。
そして打ち込みの自由度。16ステップのシーケンサーはシンプルで良いのだが、複雑なリズムパターンやメロディを組みたくなると一気に物足りなくなる。もっと長いフレーズを、もっと細かく組みたい——その欲求がどんどん強くなっていった。
これらの壁を感じ始めたとき、俺は次の機材を探し始めた。
KORG Volca FM2 レビュー|FMシンセで音色の幅が一気に広がった
最初に買い足したのが同じKORGのVolca FM2だ。FMシンセと呼ばれるジャンルの機材で、アナログとは根本的に異なる仕組みで音を作る。
FMシンセが出す音は独特だ。硬質な金属的なベル音、パキッとしたベース、透明感のある高音域——Volca keysでは絶対に出せなかった「あの音」が、FM2で一気に解決した。特に打楽器的なパーカッション音の作りやすさは、アナログ機にはない強みだと感じた。
実際に使ってみると、学習コストは想定より高かった。FMシンセはパラメーターの概念がアナログと違うため、最初はいじっても意図しない音が出がちだ。だがそれも含めて「実験」として楽しめるようになっていた自分がいた。Volcaで遊び続けた半年が、確実に活きていた。
価格も新品で2万円台と手頃で、Volcaとの連携も問題なし。コンパクトサイズのまま音色の幅が一気に広がったことは、間違いなく正解だった。
Roland MC-101 レビュー|作曲の自由度と完成度を同時に手に入れた
2台目に選んだのがRoland MC-101だ。グルーブボックスと呼ばれるジャンルの機材で、シーケンサー・音源・エフェクトが一体になっている。
Volcaの「16ステップしか組めない」という限界を、MC-101が根本から解消してくれた。4トラック同時に走らせ、それぞれ違うフレーズを組める。しかもRolandの音源クオリティは本物で、ドラム・ベース・メロディをひとつの機材で完結できる。
最初は「操作が難しそう」と敬遠していたが、実際は直感的で使いやすかった。Volcaで鍛えたシーケンサーの感覚が直接活きたし、「ここまで来たら本格的にやろう」という気持ちに自然となれた一台だ。完成度の高いビートが短時間で作れるようになった体験は、正直かなり嬉しかった。
「安い機材で始める」の本当の意味
6,000円のVolcaで始めた俺が、半年後に2台目・3台目を買う流れになった。これは「失敗」じゃない。むしろ正しい順序だったと今は確信している。
高い機材を最初に買うと、「元を取らなければ」というプレッシャーが生まれる。続けなければならない義務感が、本来楽しいはずの音楽制作を苦しくする。高い機材は続けなければならないプレッシャーになる——それが怖かった。
安い機材で始めることの本当の意味は「費用を抑えること」じゃなく、「プレッシャーなく自分が何を好きかを発見すること」だ。Volcaがあったから、俺はFMシンセの音が好きだと気づけた。複雑なシーケンスが作りたいと気づけた。その「気づき」があって初めて、次の機材選びで失敗しなくなる。遊びが実験になり、実験が「自分の好み」を作っていく。そのプロセス自体が財産だ。
結論:具体的な推奨ルート
これから電子音楽を始めようとしている人に伝えたい推奨ルートはこうだ:
- まずVolcaシリーズで始める(中古なら3,000〜8,000円)
- 半年〜1年、とにかく毎日触る(触らない日があっても気にしない)
- 「足りない」と感じた部分を言語化する(音色?自由度?音質?)
- その「足りない」を補う機材を1台だけ買い足す
音色の幅が欲しいならVolca FM2、作曲の自由度と完成度が欲しいならRoland MC-101だ。どちらを先に買うかは、自分が「何に不満を感じているか」で決まる。
6,000円の投資が、1年後には確かな「自分の音楽」になっている。そういう始め方を、俺は正解だったと思っている。



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